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パネルディスカッション Part A「ビジネス領域としてのVRの2017年を振り返る」に続き、パネルディスカッション Part B「エンターテイメント分野の2017年を振り返る」がスタートした。
登壇したのは、株式会社バンダイナムコエンターテインメント AM事業部エグゼクティブプロデューサーの小山順一郎氏(通称:コヤ所長)と、同AM事業部AMプロデュース1部プロデュース4課マネージャーの田宮幸春氏(通称タミヤ室長)、そして株式会社ハシラス代表取締役であり、施設型エンターテイメントVRを推進するべく尽力しているロケーションベースVR協会代表理事の顔も持つ安藤晃弘氏の3名である。
バンダイナムコエンターテインメントの田宮幸春氏(左)と小山順一郎氏(右)
冒頭、2017年の施設型エンターテイメントVRのエポックメイキングであったVR ZONE SHINJUKUを手がけた小山氏と田宮氏が世界最大級の屋内型VRエンターテインメント施設のことを語った。
「VR ZONE SHINJUKUの大枠の企画が決まったのは2017年2月頃で、それからオープンまでのわずか半年で飲食ブースのフードメニューから内装施設、プロモーションムービーの制作といった様々な企画を進めていきました。VR ZONE SHINJUKUの蓋を開けてみると、やっぱり『マリオカート アーケードグランプリ』の存在がものすごく大きくて。ゲームセンターのアーケードゲームというのは、100円の積み重ねで1日当たり20回、30回プレイしてもらえればいいなという世界なのです。それが『マリオカート アーケードグランプリ』ではその10倍も回転しているという存在は大きい。やっぱりIP(知的財産)の力は大きいなと実感しました」(小山氏)
「全世代が『これは知っている』という遊びはVR体験のきっかけとしては非常に強いですね。バンダイナムコゲームスではアーケードゲームでも様々なものを作っていますが、体験する前から『これは面白い』と確信を持って遊べるものってなかなか無いのです。その点、『マリオカート アーケードグランプリ』のゲームブランドは鉄板で『絶対に楽しい』という領域にマリオカートがあるのだなあと思いました」(田宮氏)
2016年にお台場(VR ZONE Project i Can in お台場ダイバーシティ)、2017年に新宿(VR ZONE SHINJUKU)と施設型エンターテイメントVRの裾野を広げてきたバンダイナムコゲームスでは、VR ZONE Portalというかたちで全国展開を予定しているという。
「VR ZONE PortalもVR ZONE SHINJUKUと同時に会社側へ提案して受け入れられたものです。というのも、VRエンターテイメント施設はまだまだ関東中心だったため、各地でVR布教活動をしないといけないという考えがありました。また、VR ZONEという存在はいわゆる“遊園地”ではあるものの、各地でバラバラであっても最終的には一つにつながりたいなという思いがあって“Portal”と名付け、ショッピングセンター内のナムコのゲームセンターの一角を借りてVR ZONEの布教活動を始めているところです」(小山氏)
ハシラス代表取締役およびロケーションベースVR協会代表理事の安藤晃弘氏
続いてVRについて語るのはハシラスの安藤氏。ハシラスでは2017年だけで14作品ものVRコンテンツを開発したという。
「当社ではかなりの部分で自社企画ではなく委託企画という側面があります。ただ、委託の段階でエンターテイメントVRの内容を当社側から提案することが多いため、なんだかんだ言っても自社企画を世に発信しているとは言えると思います。
また、当社では“遊び”をVRで再現する際、基本の動きとしていくつか現実にない動きを入れています。たとえば、『物を持つ』『物を投げる』のほかに、『遠くにある物を吸い寄せる』という動き それはエリア外の遠くにある物を取る動きであるのと同時に収集の動きを兼ねるわけです。また、『浮かす』という動きがあって、親指のパッドを空中で持ってボタンを押すと空中で花火を点火することができるわけです」
ハシラスではVRによる他にはない体験を提供するコンテンツが多く、CLOCK WALKはVRゴーグルを装着することにより無限に歩き回れる感覚が味わえる作品となっている。
ハシラスが開発したマルチプレイ無限歩行システム「CLOCK WALK」
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