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「MURO’S VR WORKSHOP」レポート(後編)

 

中編から続く)

 

ストーリーの『もしも』を考えてテストを重ねることが大事

映画では観客の「視線」をうまく操るように、VRではプレイヤーの「位置」をうまく操る必要がある。また、動きそうな配置物があるのに、それを触って動かないときには没入感を損なう。そこで、動かないものには、視覚的にも鎖で固定しておくなど、「動かない」という表現にする必要がある。

「イメージしている物体の重さとVR内で持ったときの重さの動きが合っていないと、VRへの没入感が弱まります。たとえば、クルマがあってそれを片手で持ち上げてしまうと違和感があります。しかしそれは、設定で『僕はスーパーマンです』という設定なら違和感はなくなります。そういったことは事前設定で立ち位置を決めておきましょう。また、上下を見るということは2D映像では表現できない感覚です。そこで、あえて縦の演出や表現を足していくことは、2D映像では味わえない表現ができるでしょう」また、物体の作りについては、ある程度は誇張したほうがいいことがよくあります。たとえば、鉛筆をそのままに表現すると細くて持ちにくくなりますが、あえて誇張すると持ちやすくなり操作のストレスを軽減できます」

 

VRコンテンツ内の音の表現については立体音響が当たり前になりつつあるが、反響音や残響音まで考慮して作られているVRコンテンツは少ない。しかし、回り込む音で気配を作れるので、音の設定は重要となる。また、VRでもっとも大事なのはプロトタイプを作りである。そのプロトタイプを確認してフィードバックをしていく必要がある。「プロトタイプを作っては見え方を確認」を繰り返すことが大事となる。

「キャラクターをモデリングする際、目が死んでいると、いわゆる“不気味の谷”へと陥るので、目にハイライトを入れて輝きを見せるとか、微細な眼球運動を入れるなどの工夫が必要です。また、キャラクターをアップにしたときに、布の縫い目がしっかりしているなど、細かいディティールがあるとそれが感動につながります。なお、VRでは細かいしぐさでもプレイヤーに伝わりますので、ゲームのように肩で呼吸してしまうと気持ちが悪くなる原因になります」

 

次にMuRo氏は、部屋の中など、制限された視界ではプレイヤーが個々のオブジェクトに意味を見つけようとして、独自の推測を立てることがあると語った。

「プレイヤーは、ただの小道具に対しても『これは何かのキーワード?』『なぜここにある?』といった探偵モードに入ります。それには、見たものすべてのディティールについて意味を見いだそうと熱心に取り組むというメリットのほか、ストーリーとは別に周囲を調査することに意識が向いてしまうというデメリットもあります。また、シーン内に重要なアイテムを二つ以上同時に発生させると『取り逃がした!』『見逃した!』といった感覚を与えるので、不安になる人もいます。しかし逆に、サスペンス系のストーリーであるならば演出として効果的でもあります。最後にひと言付け加えさせていただきますと、ストーリーの『もしも』を考えてテストを重ねることです。たとえば、『もしも、あの敵を殺して武器を奪ったら?』『もしも、武器を相手に投げてみたら?』などなど。そこでできると予想されたことができないとしたら、それはプレゼンスを損ねているということなので注意してください!」

 

休憩を挟み、Oculus Riftを使って実際に『MakeItFilm』と『PlayAniMaker』の体験会を実施された。まずはMuRo氏がプレイした後、ボーンデジタル社のスタッフやワークショップの受講者がプレイ。『MakeItFilm』と『PlayAniMaker』が存分に体感され、本ワークショップは終了した。