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パース製作現場におけるCGとVRの活用の仕方 ~スペースラボ株式会社に聞く~(中編)

 

前編から続く)

 

フォトリアルすぎない絵画的なCGパース制作に強み

――どのような制作体制でCG制作をおこなっていますか?

金澤氏:弊社にはCG制作スタッフが40名ほど在籍しているのですが、その中で8~10名のクリエーターが1チームとなり制作にあたっています。といっても、ゲーム制作のような分担作業は少ないのが特徴です。1案件を1人で最初から最後まで担当するのが基本となっており、大型案件でも分担して作業するのは2~3名程度になります。

小笠原氏:その分、スタッフそれぞれの作品に個性があります。そのため、クライアントが気に入ったテイストを制作するスタッフに対して、指名で案件の依頼をもらえることもあります。チームでまとまっているというよりも、8~10名それぞれの個人事業主のクリエーターが協力しながら制作しているイメージです。

 

――どのくらいの数のCGパースを制作されているのでしょう?

柴原氏:1ヵ月あたり300案件程度を同時進行しています、1案件自体の制作期間が短いのも商業施設のパースの特徴で、依頼からクライアントとのやりとり含めても5日程度、短いときには3日というときもあります。このような状況の中でも、フルCG、フル3Dにこだわってパースを制作しています。

工藤氏:1案件でCGパースが1枚というときもありますが、多いときには20枚程度になる場合もあります。そのため、レンダリングも当然、膨大なものとなっており、社内のパソコンでは常になにかしらのレンダリングがかかっている状態です。

柴原氏:制作期間が長くても5日程度ですから、レンダリングに時間を取られてしまうと納期に間に合いません。そこで、ローポリゴン化するなど、できるだけ軽くしており、短ければ5分、長くても2時間以内でレンダリングを済ませるようにしています。なお、レンダラーはCINEMA 4Dのネイティヴ環境とV-Rayとを使用しています。最近では広告系のパースも増えてきたので、雰囲気が出るV-Rayも使用しています。ただ、CINEMA 4Dの雰囲気を気に入ってもらっているクライアントもいらっしゃいますので、そこは使い分けています。

CGパースの作品例

 

――スペースラボさんのCGパースの特徴は?

金澤氏:建築系のパースは写真でなく、あくまで絵です。夢を売るためのパースですので、リアルであり過ぎる必要はないと考えています。そこでフォトリアルすぎないCGパースを制作することを心がけています。もちろんフォトリアルも描ける上での話です。

柴原氏:写真のようなリアルなパースを描いても、クライアントには逆に喜ばれません。というのも、あまりにリアルに描きすぎると、竣工後との違いで困るようなことがあるからかもしれません。そこで、プレゼンテーションでも、フォトリアルを追求するよりも、コントラストを付けるなど、絵画的なエッセンスセンスがないと勝てません。弊社ではちょうど、絵と写真との中間的なCGパースを制作することを目指しており、そこがクライアントから評価をいただいているのだと思っています。

 

後編に続く)