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産業向けVRセミナー『VR/ARの現状と今後』レポート(2-2) 『ものづくりとVR』(後編)

前編から続く)

2017年、VRのトレンドは「コラボレーション」

VRでは「CGのビジュアライゼーション」も活用されている。

「モノづくりのためのCGのビジュアライゼーションは、工業デザインの場で培われています。たとえば、『クルマの車体の色味を変えてデザインを検討する』という変化をプレゼンテーションできる簡便なツールが登場しています。最近では技術への要求が高まっているため、かつてはゲーム機のプレイ画面で見られるような低品質なCG でしたが、今では車内の屈折反射を忠実に計算して生成される『実物に迫るCG』が手軽に手に入るようになりました」

 

高精細でサイズが非常に大きいデータを処理するのは、まだまだ険しい道のりではある。しかし、最近ではレイトレーシング技術を使用した CPUベースのレンダリングツールがある。そのため、かつての技術では3秒程度しかCG化できなかった動く鉄道のデータも 、今では 大きいデータでもラクラクさばけるようになった。

「以前は大きなデータのCGレンダリングは途方もない時間が必要でした。しかし今ではコンピューターの集積技術も上がったため、コンピューター1分台で8ノードのレンダリングを収束させる、ということも容易になっています」

 

モノづくりの現場において、2017年にトレンドとして色濃く出てきたのが、コラボレーションできるVRといえるだろう。

「これまでVRといえば、一人がヘッドマウントディスプレイを被って、外野の人たちはVRで表示されている映像をモニターで見るようなかたちが大半でした。ただそれでは何がどう見えているのかがよくわからず、投資段階の合意形成がとりにくいといったデメリットがあります。そこで登場してきたのが『コラボレーションVR』です。たとえば、複数のヘッドマウントディスプレイで複数人が同一のヴァーチャル空間に入って、同じVRを体験できるというものです。このような形でコラボレーションが加速していくと思いますし、よりお互いを意識してコンセンサスを図る技術が上がっていくのではないかと期待されています。

ちなみに、VRコンテンツ内で登場するアバターには、目線がわからないようにサングラスをかけさせていることが多くあります。この問題点も『アバターの表情をCGで合成する技術』をGoogleが開発しており、『SIGGRAPH 2017』(年に一度、開催される世界最大のCGカンファレンス)で発表されています」

 

POC(概念実証)をおこなって、「ではVRに投資をしていこう!」となったとき、その先に待っているのはCGに対する地道な投資である。

「VRコンテンツをつくりたいと考えたとき、さまざまなデータにCG化しなければいけません。CADデータの場合には、外見がないので材質も決定 必要があります。そして、これは非常に地道な作業になります。そのほか、CADデータ はたしかに『ワンソース、マルチユース』で使えますが、一部 使い物にならず、他のソリューションを用意しなければなりません。そんなこんなで、そのソフトに応じたデータを用意する必要が生じます。『マテリアルデータ も使用するソフトごとに用意しなければいけない』ということです。それをなんとか解決するために、ボーンデジタルではさまざまなソリューションを用意しています。それは、『xTex』や『TAC7』というマテリアルを作成するソリューション、『Substance』『MDL』というマテリアルのマネジメントできる技術です。そのほか、『PxXYZ Studio』という、さまざまな使用目的に応じてCADデータの解像度 を可変させるソリューションも用意しています。

 

CADデータというものは事前に解像度(データ量) がわからないため、「とにかく予算内で可能なもっとも高性能のコンピューターを購入してPOCをする」というケースも少なくないだろう。しかし検証から段階が進めば、追加 投資も必要になるはずであり、コンピューターのサイズは実情に合わせていかないとならない。そのためには、「データサイズを小さくする」ということが大切になる。

「VRコンテンツ作成で利用される事が多いUnreal Engine は500万ポリゴンも読めないようなデータ制限が厳しいツールです。しかし、CADデータを削減するソリューション『PiXYZ PIPELINE』を活用すれば、非常に高精細な自動車のCGを作成できるようになります。このソリューションを導入することにより、大がかりなシステムに投資する必要がなく、現場に見合った設備投資が可能となるのです」

 

ただ、プロフェッショナルなツールを使ってVRデータの編集をしたとしても、それをそのままユーザーにわたすことはできない。ユーザーインターフェースを簡単にしないと展開しにくいわけである。そこで最後に中嶋は次のように締めくくった。

「ボーンデジタルでは、Autodesk製品の取り扱いや知見を生かしてユーザーインターフェースのカスタマイズサービスも提供しています。細かい操作画面ではなく、たとえば画面左側にユーザーに必要なインターフェイスを抜き出し厳選して露出させたものを作成して提供するような開発支援サービス をおこなっています。ここまで話したように、ボーンデジタルではVRやCGへの投資をサポートしていきます」