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「Autodesk University Japan 2017」セッションレポート ~建築業界でのVR/MR活用の海外最新状況~(前編)

去る2017年9月21日~22日、「ヒルトン東京お台場」にて、オートデスク株式会社主催のカンファレンス「Autodesk University Japan 2017」が開催された。このカンファレンスは、製造、建築、土木、メディア&エンターテイメントなどの業界において、将来を見据えながら業務に役立つ情報を「学び」、さらに参加者が「交流」の場として活用できるイベントとして開催。同イベント内では、オートデスク製品の最新テクノロジー動向の紹介やイノベーションを推進しているユーザーによる事例、ソフトウェア操作のスキル向上などのセッションが多数開催された。

また、本イベントでは、ソフトバンク コマース&サービス株式会社、応用技術株式会社、日本マイクロソフト株式会社、インテル株式会社、レノボ・ジャパン株式会社、エヌビディア合同会社などといった企業が協賛しており、活発な展示が行われていた。同時に、会場内には「VR / AR ルーム」が開かれ、各社のVR/AR技術を体験することができた。

そこで今回は、本イベント内で開催されたセッションのうち、「建築業界での VR/MR 活用の海外最新状況」と題され講演が行われたセッションを紹介したい。

 

VRの最大の価値はリアルなスケール感

本セッションで登壇したのは、株式会社日本HP Workstation Business Unitの「大橋 秀樹 氏」。驚いたのは、同氏がバックパックのようなものを背負って登場したことだった。

「すぐに帰りたいからこのような格好をしているわけではなく、背負っているのは次世代VRソリューションの要となるHP製品(参考出品)です。こちらVR用のバックパック型ウェアラブルタイプのワークステーションとなりますが、今後、こういったデバイスをHPとして商品化していきます。まさにVRのためのデバイスとして、身体に身につけてウォークスルーできる製品をリリースしていきます。楽しみにしていただければと思います」

このVRデバイスはウェアラブルだけでなく、ドッキングステーションに取り付けてデスクトップマシンとして利用することもできる。そのため、この1台でVRコンテンツのクリエーションからプレゼンテーションまで実現化できるようになるという。

 

同氏に続いて登壇したのは、エヌビディア合同会社のGlobal Business Development for Enterprise VR and AEC NVIDIA Director「トーマス・ライリー 氏」。建築分野のエキスパートとして活躍している同氏が、建築業界におけるVR/MRさらにAR含めた活用の海外最新状況を語った。

「こちらがVRに携わるテクノロジーの一群になりますが、我々のようなハードウェアメーカーやハードウェアコンポーネント、そしてスキャニングのテクノロジーやデザインツール、それにレンダリング、VRへの変換、最後にAEC(Architecture/Engineering/Construction)の企業、これらが一つになってVRを創り上げていくと考えています」

 

VR/AR/MRこれらを総称して『IMMERSIVE REALITY』(没入現実)という言い方をしているが、さまざまなかたちで現実をコンピュータで再現しリアルな世界と合成している。そしてこういったものを、テクノロジーのワークフローとして活用する流れとなっている。

「VRの価値として『スケール』というものがあります。パソコンディスプレイ上でデータを見るのではなく、リアルなスケール感でデータを見ることができるということが最大の特徴なのです。また、さまざまな視点からビューポイントを見られるということも特徴として挙げられます。そして、一つのスケールの大きなデータを複数の人が同時に見ることによって意思疎通を早めることができるわけです」

 

プロフェッショナルなコンテンツをつくる場では、デザインステージからデザインをレビューするところ、そして実際のファシリティーまで、さまざまな部分のコンテンツをVRで取り込んで一気貫通することができるという。

「建築におけるVRの最終点は実際に使うところ 建築の施工に入る前のリハーサルです。その後に建設の際のトレーニング、そしてマーケティング、最後にはセールスツールとしてVRを活用し『実際の高さから視線を見てもらう』などといった使い方ができると思います。実際の事例ですが、エヌビディア本社ビルを新築する際にVRが活用されています。データをさまざまな角度からスキャニングしてエグゼクティブのレビューのために使用したわけです」

 

後編へと続く)