デジタルクリエイターを支援するサービスカンパニー ボーンデジタル

不動産業界におけるVRの現状 ~株式会社アートクラフトに聞く~(前編)

建築CGパースや建築CGアニメーションなどの制作を中心に手がけている株式会社アートクラフト。その仕上がりや質感の高さから、多数の不動産デベロッパーや広告代理店などから高い評価を得ている。また近年では、VRコンテンツの制作も手がけるようになっており、VR映像によるヴァーチャル・モデルルームが好評を博しているという。

今回はこの株式会社アートクラフトで代表取締役を務める城ヶ﨑秀幸氏に、同社がVRコンテンツを手がけるようになった経緯やVRコンテンツのビジネス的価値などについての話を語っていただいた。

 

CGで作成した360°パノラマ画像をVRコンテンツとして制作

――まず、アートクラフトさんの事業概要を教えてください。

城ヶ﨑氏:当社の主なクライアントは不動産業界です。当社の事業形態としてはCGプロダクションですので、不動産デベロッパー様や広告代理店様などから依頼されCGによる建築パースを中心とした画像や映像などを制作しています。

 

――建築CGパースを手がけていたアートクラフトさんがVRコンテンツを手がけるようになった理由はなんでしょう?

城ヶ﨑氏:不動産デベロッパーが新規分譲の不動産物件を販売する場合、基本的にはモデルルームをつくってマンションや家を買いたいお客さまを集客しています。ただ、当社でお付き合いのある不動産デベロッパー様は中規模の企業様が多く、1棟あたりの販売戸数も100戸未満が多く、40戸、50戸規模の物件が中心となります。そうすると、販売全体に対するモデルルームをつくるためのコストが負担になるわけです。モデルルームの規模にもよりますが、2000万~3000万円程度が必要になってきます。

 

――そこでCGプロダクションであるアートクラフトさんに相談があったわけですね。

城ヶ﨑氏:そのとおりです。とある不動産デベロッパー様から、「ヴァーチャル・モデルルームというかたちでVRコンテンツを制作できないか?」と相談されたのがきっかけです。とはいえ、現状ではヘッドマウントディスプレイを被ってVR体験をしてもらうかたちではなく、CGで作成した360°パノラマ画像をコンテンツ化しパソコンのディスプレイで見てもらうという営業ツールとしての使われ方が中心となっています。

同社がCGで制作したヴァーチャル・モデルルーム。複数の部屋がリンクでつながれている

――VRコンテンツ制作をする際に気をつけていることはありますか。

城ヶ﨑氏:不動産販売用のツールとして使われるものですので、細かい精度が要求されます。1戸数千万円という買い物になるわけですから、リアルなものでないとお客さまとしてもピンときませんし、脚色してサイズを変更するといったようなことがあってはいけません。そこでたとえば、タイルの割付枚数や目地幅など、細かい箇所までをクライアントとやりとりをしながら制作しています。

 

――不動産業界において、VRコンテンツを利用するメリットはどんなことがありますか。

城ヶ﨑氏:もちろんコストメリットが最大のものですが、一つのVRコンテンツを制作することで、カラーバリエーションや家具配置、間取りパターンの変更など、さまざまなバリエーションが見られるというメリットもあります。時間帯を変えて夜景や照明の雰囲気を見てもらうこともできますし、スマホやタブレットでも視聴できますので広告ツールとしても活用頂けます。

また、VRコンテンツを制作する際に、インテリアコーディネーターに家具の指定をしてもらう場合もあります。モデルルームで実際のデザイナーズ家具を入れるとなると、それだけで数百万円になってしまいます。しかしVRコンテンツならどんな家具を配置してもデータなわけですから、そのコストも必要なくなるわけです。

 

後編に続く)