――CGの制作環境を教えてください。
城ヶ﨑氏:当社にはCG制作スタッフが7名いるのですが、建物の躯体部分をモデリングしているのは建築や設計シミュレーションのための3DCGソフト「form・Z」です。ただ、家具や細かい部分の作成は「3ds Max」を使っており、form・Zで作成しても最終的には3ds Maxに持ってきています。また、室内空間などはすべて3ds Maxで作成するほうが効率的ですので、最近では最初から3ds Maxでモデリングするパターンも増えてきていますね。そのほか、画像レタッチ作業はPhotoshop、映像編集にはAfter Effectsを使っています。
――VRコンテンツはどのようにして制作していますか。
城ヶ﨑氏:パノラマ画像のVRコンテンツは3dsMaxを使用して、そして、リアルタイムのVRコンテンツはUnreal Engineを使用して制作しています。Unreal Engineは比較的新しいソフトで当社でも試行錯誤しながら使っている状態でしたが、最近ではクライアントに対してようやく提案できるレベルになってきました。Unreal Engineは本来ゲームソフトですから、使いこなしていけばいろんなことができると思います。ただ不動産コンテンツで、「そこまで時間とコストをかけて作り込んでいくことが必要か」となると疑問符が付きます。そこで機能を絞りながら、効率よくコストも抑えたかたちで提案をしています。
――ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を活用するかたちでのVRコンテンツの制作はされていますか。
城ヶ﨑氏:スマートフォンを使用した簡易HMDを利用して体験できるVRコンテンツは、ようやく一般化してきた実感があります。そしてまた、近年、htcのVIVEやOculusのOculus Riftなどといったハイスペックな機器が登場するなど、ハードウェア面が進化しているのと同時に価格的にもこなれてきています。そこで2017年になってからはハイスペックなHMDを使用する(皆さんがイメージする)VRコンテンツの制作も増えてきています。販売スペースが限られている場合でも、HMDを活用すれば圧倒的な没入間で現地を再現できます。そのため、いくつかのモデルルームでも、ハイスペックなHMDを使用するVRコンテンツが採用され始めています。
ヘッドマウントディスプレイ用VRコンテンツのサンプル
――360°パノラマ画像のVRコンテンツと、ヘッドマウントディスプレイによるVRコンテンツとで制作方法の違いはありますか。
城ヶ﨑氏:360°パノラマ画像のVRコンテンツは定点から見る画像ですので、ハイポリゴンで細かくレンダリングし、じっくりと時間をかけて作り込むことによる高精細でリアルな画像制作を心がけています。しかし、VIVEやOculus RiftといったヘッドマウントディスプレイによるVRコンテンツはリアルタイム画像ですから、もちろんポリゴンを抑えていく必要があります。同じVRコンテンツでもこのような違いがあります。
――ヘッドマウントディスプレイを使ったかたちのVRコンテンツを活用する際の問題点を教えてください。
城ヶ﨑氏:ヘッドマウントディスプレイにコードがつながっていたり、大げさなVRゴーグルを被ったりといった部分がネックになっていると思っています。とくに女性にとっては、「大きなVRゴーグルを頭に被る」ということに対しては抵抗感があるのではないでしょうか。ただ今後、ヘッドマウントディスプレイのワイヤレス化が実現することや、眼鏡サイズのVRゴーグルが登場することで、その問題は解決していくでしょうね。
――不動産業界におけるVRの今後はどのように考えられていますか。
城ヶ﨑氏:VRコンテンツも二極化していくと考えています。それは建築済みの完成物件を見学しているかのような、リアルでクオリティが高いVRコンテンツと、注文住宅などでサイズ感や使い勝手をシミュレーションすることが主な用途の「簡易的に空間を体験する」というようなVRコンテンツの二つです。使用用途や目的により、同じVRでもアプローチの仕方が変わってきます。そこで当社では、VR機器も含めた提案をクライアントに対して行っています。
――最後に、アートクラフトの今後の展望を教えてください。
城ヶ﨑氏:当社としては「家を買うこと=夢を買うこと」だと考えています。その夢を買うときに、中途半端なVRコンテンツを見せられても、お客さまとしては幻滅してしまうでしょう。そこで極力リアルで高精細なVRコンテンツを制作していこうと考えていますし、これまでもその方針で制作してきました。
また、弊社は少数精鋭で事業を展開していますので、「あれもやりたい、これもやりたい」では中途半端なものになってしまいます。そこで基本線に関しては今後も、今の路線を踏襲していこうと考えています。ただ、クライアントから「こんなことはできない?」と聞かれたことには柔軟に対応できるよう、常に準備しておきたいと考えています。
――本日はありがとうござました!