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プロのアーティストやスタジオを招いてのクローズドセミナー~「Fusion 360セミナー」レポート(前編)

2017年6月10日、クローズドとなるAutodesk Fusion 360(以下、Fusion 360)のセミナーが開催された。このセミナーに参加したのは、映像系CGツールやFusion 360以外のCADツールを使用している各界の著名アーティストやスタジオ。Fusion 360を使うのは初めて(もしくは、個人的に少し触っていた)という方々に集まっていただいた。

ハンズオン形式で13時から16時30分の3時間半あまりにわたって展開された本セミナー。セミナーを受講した3名のアーティストと2組(5名)のスタジオの方々に、セミナー終了後、Fusion 360の使用感やその使い勝手などの感想を聞いた。

 

ハンズオン形式でセミナーを開催

1つのパッケージに工業設計と機械設計、コラボレーション、機械加工のツールが集約されている、今までにない製品開発のための3D CAD、CAM、CAE統合ツールであるFusion 360。ハンズオン形式の本セミナー講師として迎えたのは、3D CADや3Dプリンターの導入から、それらを活用した新規事業のコンサルティングをおこなうほか、多数のCAD解説本の執筆実績を持つmfabrica代表の水野操氏。

本セミナーでは同氏がFusion 360が実際に操作しながら使用方法を解説していったほか、適宜、質疑応答がおこなわれた。ツールの操作を習得するには短い時間ではあったが、その機能の一端を伺い知ることができた3時間半のセミナーとなった。

そしてセミナー修了後、参加されたGKダイナミックス(チーフデザイナー・本田宗久氏、デザイナー・竹崎彰一氏)とModelingCafe(コンセプトデザイナー・山家遼氏、モデラー・藤田和也氏、モデラー・ハク・インシ氏)の方々や、アーティスト3名(テクニカルディレクター・小森俊輔氏、3DCG/ミニチュアモデリング モデラー・小林和史氏、studio picapixels代表・帆足タケヒコ氏)の方々に、Fusion 360を体験しての感想や評価を語っていただいた。

 

初めて使うときの敷居の低さを感じます(GKダイナミックス)

 

――Fusion 360を触ったことはありましたか?

本田氏「以前からFusion 360には興味を持っていましたので、ちょうど1ヵ月ほど前から個人的には触っていました。ただ、使ってはいたものの我流でいじっていただけですので、『立体形を閉じるためにはどうしたらいいのだろう?』とか、『平面は作成できても、そこから側面を作成して立体的に閉じていくのはどうすればいいのか?』といった疑問は常に抱えていましたね」

竹崎氏「個人的に趣味でモデリングをしていますので低価格なツールは色々と試しているのですが、Fusion 360を触ったのはこのセミナーが初めてです」

 

――では、本格的にFusion 360を触ってみてのご感想は?

本田氏「普段の業務ではモビリティのデザインを主におこなっており、別のCADソフトを使用しています。そういったソフトの、『線を一本一本引いていきそこに面を張る』という操作感覚とは異なり、Fusion 360の操作方法は、粘土で形をつくるのと近いアプローチで、非常に感覚的だと思いました。また、個人的にZBrushも使っていますが、そのツールは面の精度に少し不満があります。その観点から言うと、Fusion 360というのは両ツールのいいとこ取りのような気がします」

竹崎氏「複雑な構造物をつくろうとしたとき、突き詰めてみればどのCADツールも出来ることは大きく変わらないと思います。それよりも、新たにツールを使おうとしたときの取っ付きやすさ、敷居の低さがポイントとなるのではないでしょうか。そう考えたとき、Fusion 360は明快なインターフェースを持ち直感的に操作できるので初めてでも極めて取っ付きやすいのではないでしょうか。普段の仕事でも、ある程度の基本形状をCADツールで作成する場面があります。そんなときにパパッと簡単に使えるツールとしてFusion 360は最適だと感じました」

 

――Fusion 360は今後どのように使えそうですか?

本田氏「モビリティのデザインでいえば、外装パーツのデザインで有効に使えそうですね。また、『ZBrushで作成したメッシュデータをどうやって設計が展開できるデータに変換して渡すか』というのは日常的に困っている問題なのですが、Fusion 360にはデータコンバート機能が実装されているということでしたので、それは是非使ってみたいと考えています」

竹崎氏「たいていのCGツールはポリゴンモデリングとCADモデリングのハイブリットとなっていて行ったり来たりして使いますが、プロデザイナー向けCGツールの決定版はまだ世の中にはないような気がします。あくまで私の主観ですが、その観点からいうとFusion 360は決定版ツールの候補になれる存在だと感じさせてくれましたね!」

 

中編)へ続く