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VRコンテンツを気持ちよくプレイさせるためのUI実装ガイド~「Unite 2017 Tokyo 」講演レポートその4~(後編)

2017年5月8日~9日に行われた国内最大のUnityカンファレンスイベント「Unite 2017 Tokyo 」でおこなわれた講演のうち、最後に紹介したいのはユニティ・テクノロジーズ・ジャパン合同会社のエデュケーションアカウントマネージャーである石井勇一氏が登壇した講演「VRコンテンツを気持ちよくプレイさせるためのUI実装ガイド」。

VRコンテンツは従来のアプリやゲームと異なりVR特有のUI(ユーザーインターフェース)が求められるが、まだ正解と呼べる手法が確立されていない。そこで本講演では、これまでリリースされているVRコンテンツにおける優れたUIの分析結果を紹介していくとともに、過去に作成したVRコンテンツから得られたVR用のUI作成の苦労話しや知見の紹介がなされた。

前編)から続く

 

VRコンテンツの入力装置は発展途上

次に、入力装置からUIを見てみよう。まずはスマートフォン系の入力装置だ。

「スマートフォン系の入力装置には、ポジショントラッキングやタッチパネルがないのが特徴となっています。しかし、ハイエンドなVRを楽しめるGear VRやDaydreamには、Bluetoothコントローラーが標準装備されているほか、Gear VRにはタッチパネルも搭載されています」

次に、据え置き系の入力装置である。

「Fove 0に関してはまだデベロッパーズキットという位置づけのため一般消費者が購入するにはまだ敷居が高く感じますが、アイトラッキングを使えるという特徴があります。実際に使ってみたのですが、高い精度でピタッとキャリブレーションが決まると目で見た箇所にすぐに視線が異動して反応すします。新しい体験ができるのではないでしょうか。ただ残念なところは、座った状態でのポジショントラッキングしかできないところですね。また、PlayStation 4はコントローラーが充実しているのが特徴です。Oculus Touchはルームスケールに対応しているので、部屋の中を移動しながらVRを楽しめます。Viveについては従来のコントローラーをワイヤレス化するレシーバーが登場したほか、今後もアイトラッキングやワイヤレスキットの発売が控えているという特徴があります。ただひとつ言えることは、どの入力装置を見ても共通していることはまだ発展途上ということですね」

 

まだ定石というものがないVRのUI

次に話したのは平面UIと空間UIの違い。普段の生活空間にあるすべてのUIが空間UIとなりVRの参考になるという。

「手が届く範囲も届かない範囲も有効なのが空間UIの配置です。腕を大きく動かす空間UIにすると楽しさも増えますが、長時間は疲れるので注意してください。また、人間の手は真っ直ぐの状態である程度以上の時間を維持できず必ず震えがきます。そこで手振れ補正を入れるためにローパスフィルタを実装すると使い勝手がグッと上がってきます」

ただ正面以外の配置は工夫が必要となる。上下左右であれば視線誘導が適切なら見てもらうことができるが、真上や真下は姿勢が苦しくなるために見られなくなる可能性が高い。さらに背後となると、よほどVRコンテンツ慣れしているユーザーでないとまず見ないという。なお、狭い範囲なら平面UIも有効であり、多数並べていくなら扇形や円形など、湾曲にUIを配置すると効果的となる。

「空間UIの配置については、チュートリアルを充実させる工夫は必須です。というのも、VR空間に入ってから現状を把握するまでに5秒~30秒程度の時間がかかるからです。そこで、最初にできることを限定するのもありだと思います。また、コントローラーによる操作を説明する際には、押したことがはっきりと伝わるようにバイブレーションで通知したり、ボタンをハイライトにしたり、といった音やエフェクトも重要です」

また、VRコンテンツには空間UIだけでなく空間音響も大事な要素となる。音は両耳で聴くことにより、「どこから音がしているのか」「どのくらい距離があるのか「建物の中にいるのかそれとも屋外にいるのか」という把握ができるようになるからだ。

「Oculusは、OculusSpatializerを利用することにより、簡易的に空間内で音は広がっていくことで3D空間の音響を再現しています。また、CardboardやDaydreamは音に志向性を持たせています。たとえば楽器の近くは音が大きく鳴り、遠くのほうでは音があまりしないというような設定ができます。このように、よりリアルな音響により、『屋内にいる』『屋外に出た』というようなことが実感できるようになります」

最後に石井氏は、「VRコンテンツを気持ちよくプレイさせるためには、リアル系なのか、ゲーム系なのか、適切な演出とフィードバックが重要ですが、ほんの少しの工夫で質が向上します。ただひとつ言えることは、定石と呼べるものはまだほとんどないこと。そのため、今ならVRで世界を取ることもできますよ」と締めくくった。