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フォード・モーター・カンパニーが VR によるプロトタイピングでカー デザインを再発明(前編)

[提供: フォード・モーター・カンパニー]

未来を導く最良のガイドは、大抵は過去を見ることで得られる。より優れたデザインとグローバルなコラボレーションのため、フォードでバーチャルリアリティによる新たなプロトタイピング・プラットフォームとラボを生み出す際、私が 3 人の賢者たちからインスピレーションを受けた理由もそこにある。

その最初の人物、アリストテレスの有名な言葉に「芸術が目指すのは、ものの外見でなく、その内にある本質である」というものがある。これは我々が集め、解釈する全てのデータを思い起こさせる。それはフォードの車を購入し、時を共にする顧客にどのような意味をもたらすか、という観点から見るべきだということだ。全てを顧客中心に考えるということを、常に心に留めておく必要がある。

二人目の賢者、アインシュタインは「そこには直感があるのみで、それは外観の背後に隠された順番を感じ取ることが役立つ」と述べた。全てには意味があり、特定の正しい順番であるべきである。正しく行われた際に、それを見て取ることができる。

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エリザベス・バロン氏 [提供: フォード・モーター・カンパニー]

そしてウィトルウィウスは、私のインスピレーションを「美とは、外観が快く典雅であり、各部分の寸法が適切な比例関係にあることで生まれる」と締めくくる。適切であり機能するのであれば、そこには自然な対称形で、その意図を理解できるものが存在する。

これら不滅の賢者たち3名の言葉は、FIVE (Ford Immersive Vehicle Environment) 開発における重要なガイドとなった。フォードのチームは、4 年前にはプリビズ・ツールを使い、ユーザーの視野を 46 インチの TV へ表示していた。Autodesk VRED 3D 表示ソフトウェアを活用する新しい FIVE は、バーチャル空間で素晴らしいリアリズムを提供し、エンジニアリングやデザイン、エルゴノミクスやその他多くの用例を全体像として見ることができる。

今や事前に計算された光と影を変換したり高価な物理モデルを組み上げたりする代わりに、VRヘッドセットを身につけることで車のデザインをフルに体験できる。例えば本物のハンドルを握り、その他の重要なコンポーネントやスイッチを物理世界で追加して、物理世界をバーチャルな世界へマッチさせる。こうすることで、スイッチに手を伸ばせば物理的に感じられ、それを正しくレンダリングされた美しいバーチャルな車の中に見ることができる。比率とデザインを認識でき、車内のインテリアコントロールの適切な配置を感じることが可能だ。

しかし、なぜフォードは FIVE を必要としたのだろう? それがデザインと開発のプロセスへ、どう役立つのだろうか? それは個人、つまり顧客だけでなくデベロッパーやエンジニア、デザイナーで始まった。

FIVE ラボの内部 [提供: Ford Motor Company]

FIVE ラボの内部 [提供: フォード・モーター・カンパニー]

キューを得る
FIVE は素晴らしい仮想体験を生み出すだけでなく、光と影の相関関係や視覚と物理的なキューを脳がどう認識するかに関する知識も盛り込む必要があった。木工を手がけている夫が以前、見えない場合もある木材の問題点をどう感じるかを語ってくれたことがある。これは非常に重要だ。計算データだけでは正しく表現されないこともあるので、FIVE は物理世界と仮想世界の両方を提供する必要がある。我々の認識と現実が、同じことを同じように体験するとは限らない。

また FIVE は現実の認識を変えることができる。それにより、自分たちより背の高い人や低い人の視点で車を体験することが可能となる。特定の車の中で、彼らの視点から見ることができる。もはや自分だけでなく、ユニバーサルな現実なのだ。

後編へつづく)

 

Elizabeth Baron

エリザベス・バロンはフォード・モーター・カンパニーにおけるバーチャルリアリティ、拡張現実のテクニカルスペシャリスト。同社で“Immersive Vehicle Verification Technology”(没入可能な車の検証テクノロジー) の開発と展開を推進してきました。FIVE (Ford immersive Vehicle Environment) プロセスとテクノロジーの最初の開発者。

本記事は「創造の未来」をテーマとするオートデスクのサイト「Redshift  日本版」の記事を、許可を得て転載したものです。

 

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