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Substanceの現在と未来~イベントレポート「Substance Days Tokyo 2017」~(後編)

去る2017年4月12日、東都京都千代田区にある富士ソフトアキバプラザのアキバホールにおいて、クリエイティブツール「Substance」を紹介するイベント「Substance Days Tokyo 2017」が開催された。主催はSubstance製品の開発・販売をおこなうAllegorithmic社と、Substance製品の日本総代理店であるボーンデジタル社。

今回のイベントでは、Allegorithmic社CEOであるSebastien Deguy氏が過去から現在までのSubstanceの動向と今後の開発やサービスなど、さらにはSubstanceの未来までを語ったほか、Substance テクニカルアーティストであるWes McDermott氏が最新のSubstance情報や新機能を紹介。続いて、SubstanceマスターであるシニアエンバイロメントアーティストであるMark Foreman氏と、スクウェア・エニックス社のエンバイロメントアーティストである和田 光氏の2名がそれぞれ、Substance DesignerとSubstance Painterの制作手法やテクニックを紹介した。丸一日にわたる長丁場のイベントであったが、イベント後には懇親会を開催。Allegorithmic社、ボーンデジタル社のスタッフと、Substanceユーザーとの交流が実現した。

(前編)より続く

幅広い業界へと広がりつつあるSubstance製品

現在、Substance製品のユーザーは増えつつあり、ソニー・インタラクティブエンタテインメントの『Uncharted 4』(邦題:アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝)や、Epic Gamesの『Paragon』に代表されるメジャーなゲームソフトでもSubstance製品が数多く使われている状況にある。

「私たちにとって喜ばしいことは、AAA(トリプルA)と呼ばれているゲーム作品のほとんどはSubstance製品を使ってプログラムされているということ。現状で見るとその比率は90%にも上っています。もう少し数字を挙げてSubstance製品の広がりを説明しますと、先月だけでSubstance Painterを起動させた回数は85万回、Substanceコミュニティーのための自由な交換プラットフォーム『Substance Share』のユーザー数は7万5000人、ダウンロード数では170万ダウンロードとなっています。また、Alexa(アレクサ)というWebサイト分析サービス企業のトラフィックランキングによると、当社のWebサイトは上位2万サイトの一つに入っています。全世界のWebサイトの数を考えるとこの数字は極めて高いものであり、SubstanceがスタンダードなCGツールとして使われている証しと言えるでしょう」

学生であればSubstanceを無料で使うことができることから、大学や専門学校でもSubstanceを教えている授業が増えているという事実がある。さらにAllegorithmic社の物理ベースマテリアルライブラリーである「Substance Source」には、テクスチャーのデジタルマテリアルが1000以上も無料素材として使えるようになっている。このように、Allegorithmic社ではSubstanceユーザーの裾野を広げる活動を展開しているという。

「近年ではゲームソフト以外の映画やアニメーションでもSubstance製品が数多く使われるようになっており、メジャーなエンターテインメント企業で採用され始めています。たとえば、ゲームを原作としたアクション映画『アサシン クリード』では、ビジュアルエフェクトの一部はSubstanceを使って制作されています。私が来日して判明したことですが、日本でもプリキュアシリーズ(アニメーション)でSubstanceを使っていると聞きました。さらに、、建築やインダストリアルの分野でもSubstanceを使ってデザインを行うことが増えてきています。企業でいえば、ホンダ(本田技研工業)、トヨタ(トヨタ自動車)、Facebook、LOUIS VUITTONなどといった大手でもSubstanceを活用し始めています」

日本でも大勢のSubstanceユーザーが携わった大規模なプロダクトが上がってきている。たとえば、セガのゲームソフト『Yakuza 6』(邦題:龍が如く 6)、カプコンのゲームソフト『バイオハザード7 レジデント イービル』はSubstanceを使用して制作されたものだ。このようにSubstanceにおける日本の位置づけは、アメリカに次ぐ大きなマーケットとなっている。そこで日本に対しては「しっかりとした対応をしていかなければならないと考えている」と、Sebastien Deguy氏は締めくくった。

Substance Designer とSubstance Painterに追加された新機能を紹介

続いて、Allegorithmic社のSubstance テクニカルアーティストであるWes McDermott氏より、2017年2月15日に新たにリリースされた「Substance Designer 6」と、2017年2月22日に新たにリリースされた「Substance Painter 2.5」について、前バージョンから追加された新機能の説明がなされた。

「Substance Designer 6」については、フォントの種類が選べるDynamic Textが使える新機能「Text Node」についてを説明したほか、Curve Node、32ビット浮動小数点合成といった新機能についても説明をしていった。「Text Node自体は簡単に使えるものですから、これを使っていくことによってさらにSubstance Designerを活用することができます」とWes McDermott氏は話す。

さらにスキャンデータのタイル化処理について、操作画面をスクリーンに投影しながら解説。「Substance Designer 6」ではタイル化するには複雑なデータでも、ぼかすことなくきれいにタイリングを行う事が可能となったことが説明された。

また「Substance Painter 2.5」の新機能については、Advanced Tri-planar Projection、Procedural Text、Transformフィルタ、Mirrorフィルタ、Warpフィルタなどについて解説。そのほか、「新しいSubstance Engine 6をサポートしたことにより、Substance Painter上でもテキストが使えるようになりました」という説明がおこなわれた。

今回のSubstance Daysイベントは10時からスタートしたが、午後の「Substance Designerマスタークラス」「Substance Painterマスタークラス」が終了したのは19時30分のこと。Substanceの全貌がつかめる濃い内容の1日となった。