デジタルクリエイターを支援するサービスカンパニー ボーンデジタル

ムービー製作現場の生の声を聞く(WOW・前編)

WOWは東京、仙台、ロンドンに拠点を置くビジュアルデザインスタジオ。Autodeskのスペシャルムービーなど、注目の作品を多数送り出している。WOWで活躍するデザイナー金原朋哉氏にお話を伺った。

--本日はよろしくお願いいたします。早速ですが、制作の環境はデザイナーさんによって違うと思います。そのなかで不可欠なツールは何でしょうか。

金原氏「全員が必要なのはレンダリングサーバーですね。サーバーが充実すれば、どんどん新しいことをやっても〝画〟が早く返ってきます」

--今レンダリングのワークフローが進化していますが、特別工夫されている部分はありますか。

金原氏「重い案件に関してはクラウドコンピューティング、レンダリングサービスも使用しています」

--社内のレンダリングサーバーはどんな構成ですか。

金原氏「Core i7相当のマシンが15台くらいです」

--サーバーは取り合いになりますか。

金原氏「使うツールが違うので取り合いですね。『Softimage』、『3ds Max』、『CINEMA 4D』、もう取り合いです。僕らはレンダリングしている人のところへ行って、『急ぎ? 僕も急ぎで』と直接交渉しています。この辺は、まだ一括管理していませんね」

--Autodeskのプロモーションムービーを拝見しました。あれはどういう経緯で手掛けられたのですか。

金原氏「Autodeskさんが『カッコいいものをお願いします』と。堅苦しいイメージもあるので若い子向けに、あまり〝アブストラクト的、オシャレ〟ではない方向、というオーダーをいただきました」

--〝Max Man〟では、粒子的な表現がありました。あれは標準の機能で実現されたものですか。

金原氏「標準のものも使っていますし、プラグインも使っています。一本のなかでも使い分けていますね」

--Autodeskのソフトは主にCADが、製造や建築業界で使われてきました。最近はVRの盛り上がりもあり、広い範囲の方にとって身近な存在になっています。誰でもある程度の環境は手に入れられて、ネットで作品を発表することも可能です。

金原氏「確かに今、ソフトウェアは充実していますね。たとえばビルが壊れるシーンを作りたいと思ったら、そのチュートリアルもたくさんあります。それを見てビルを壊すまではすぐできますが、そこから派生した面白味のあるものはなかなか作れていないと思います。
僕たちはCMのような、短期間でいろいろな要求に答える仕事もしています。そこで『何とかしよう』と、できることを組み合わせた結果面白い表現が生まれたら、ストックするようにしています。ここがアドバンテージでしょうか」

--金原さんのお仕事での具体例を教えてください。

金原氏「会社に『これいいから』と言って買ってもらった『Fume FX』を使って、『SUIREN』という映像を制作しました。Fume FXは火や煙を作るツールですがその仕事がなく……流体の速度だけをとって『RealFlow』でメッシュを、という本来とは違う使い方をしています」

--そういった使い方の場合、ご自身でも意外な結果になりますか。

金原氏「そうですね、想定外のカッコよさが出たりします。デザイナーはみな、遊び感覚を活かしている部分があるかもしれません。制作中の画面を後ろから見て、好き勝手言うこともありますね」

--「こういうツールがある」「こういう使い方をした人がいるよ」といった情報をチェックされていると思います。どういうところにアンテナを張っていますか?

金原氏「新しい手法を実験しているデザイナーのところに行って『何それ?』と聞く、という共有の仕方があります。CINEMA 4Dで面白そうなことをやっていたら、3ds Maxだったらどうやれば同じことができるかを考えて、チャレンジします」

--お互い刺激し合いながら。

金原氏「逆に3ds Maxで簡単にできることがあったら、今度はC4Dユーザーがそれを見てチャレンジします。その時は〝3ds Maxのこの機能〟という名前があるので検索などもしやすくなるわけです」

後編へ続く)