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「3D&ヴァーチャル リアリティ展」セミナーレポート(前編)

去る2017年6月21日~23日、東京ビッグサイトにおいて「3D&ヴァーチャル リアリティ展」が開催された。本展は「日本ものづくりワールド 」というイベント内で開催されたものであり、最先端の3D技術や超高精細の映像技術が一堂に出展され、その場で体験ができるという専門技術展となる。

第25回目となる本展では、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)やVR/ARシステム、モーションキャプチャ、3DCG、VRデバイス、スマートグラスなど最先端の技術が集結。90社が出展をおこなっていた。また、業界の第一線で活躍する講師が最新の技術動向や事例を学べるセミナーをおこなった。

その中で今回は、キヤノン株式会社総合デザインセンター所長の石川慶文氏、東京大学名誉教授の舘暲氏、東京大学大学院情報理工学系研究科知能機械情報学専攻教授の廣瀬通孝氏という三氏によって6月22日におこなわれた基調講演を中心に紹介していきたい。

 

3D・VRを活用したキヤノンデザインの取組みとは?

基調講演で最初に登壇したのは、キヤノン株式会社総合デザインセンター所長の石川慶文氏。「3D・VRを活用したキヤノンデザインの取組み」と題した講演がスタートした。

本講演の冒頭では、1937年に「精機光学工業株式会社」として一台のカメラ(Hansa Canon)からスタートしたキヤノン株式会社が、その後の経営多角化やM&Aなどにより事業領域を拡大。現在では連結売上高3兆4015億円(2016年度)へと成長してきた経緯を紹介した。

続けて、キヤノン株式会社のデザイン部門についての紹介がなされた。同社のデザイン部門には、「デザインリサーチ」「プロダクトデザイン」「ユーザーインターフェイス」「ビジュアルデザイン」「ユーザビリティデザイン」「CGデザイン」といった6のチームが存在し、製品やサービス、コーポレートコミュニケーションに至るまで、総合的にキヤノンのデザインを担当していると話す。その中で「CGデザイン」チームは高品位なCGを社内で作成する専門のチームであり、静止画のCGに加えてムービー作成などもおこなっている。

「本講演ではCGデザインチームが作成したコンテンツを見ながら話を進めていきます。そして、このチームがどのように製品開発をしているのか。どのように3DCGが活用されているのかを、35mmフルサイズ約3040万画素CMOSセンサーを持つ当社のハイアマチュア向けのデジタル一眼カメラ『EOS 5D Mark IV 』を例にしてデザインプロセスを説明していきましょう。この製品でこだわりを持って作り込んでいるのは操作性(エルゴノミクスデザイン)になります。数多くのデザイン案の中から選ばれたスケッチはCADを操るデザイナーにより3Dデータ化されます。2Dから3Dへと変換する際には、スケッチで表現された形状の魅力を損なわないようにデータ化していくことがこの段階での大きなポイントとなります。そして3Dデータが完成すると3Dプリンタで出力していきます。早い段階で3Dプリンタを活用し立体としての形状を確認していくわけです。この3Dプリンタで出力されたモデルで、グリップの握り具合やシャッターボタン、レリーズボタン、親指で操作する背面ボタンの操作性、両手で持ったときの操作のしやすさなどといったことを検証していきます」

最後は人間の手の感覚が頼りになるので、デザイナーは自分が3D入力をして出力された3Dモデルを直接削ったり粘土で盛ったりして触った感触として最良のものに造り込んでいく。そして、それを再度3Dスキャンすることにより3Dデータに反映していく。このようなデジタルとアナログがミックスした作業を繰り返すことによって、完成度の高い造形データを作成していくという。

「デジタルツールを使うメリットとして、その業務効率化によってアナログでの作業時間を確保できるということも挙げられます」

 

中編)につづく