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業界を変える 2017 年以降のデザイン & テクノロジー予測 5 項目(後編)

3. センサー ロボットが製造をより素早く正確にする
コンシューマ IoT デバイスは、ばかばかしいほど凝り過ぎたものになることがある。35 ドルの一般的な家電製品で事が済むのに、スマートフォンに接続された高級トースターが必要だろうか? IoT は近い将来、より大きな影響を産業ロボットへ与えるようになるだろう。

ロボットはこれまで、目の前に人間や他のロボット、作業対象が存在するにもかかわらず、完全に制御された状態で、丸暗記スタイルの機械的な作業を実行してきた。だがゆくゆくは、製造ロボットはより柔軟で、さまざまな状況に適応できるものとなる必要がある。

マデリーン・ギャノン氏の Madeline Gannon’s Quipt プロジェクトなど、センサー ロボットの重要な進展が進行中だ。ロボットが周辺環境を確認し、自分でプログラムを変更して、同じ単純な間違いを繰り返さないようにするのを支援する。Autodesk Applied Research Labも、タスクではなく「目的」を扱う大型アディティブ ロボットに取り組んでいる。プリント中も常に、いかに目的達成へうまく進んでいるかを測定し、必要に応じて軌道修正することができる。

このラボには、未体験の新物体を拾い上げ、「意見」を持ち、対象の最も掴みやすい部分を判断できるロボットもある。失敗しても、その間違いから学ぶことができる。次のステップとして考えられるのは、視覚にカメラを使用したロボットに代わって、ロボットの目をレンダリングされたシーンで置き換えることだ。公園のベンチ上のレゴや、他のレゴに混じったレゴ、さらにはネコに付けたレゴなどのシーンを提供するのだ。

LEGOBot building robot. Courtesy Autodesk.

コンピューターと機械学習システムで操作されるロボットは、こうした多様なシナリオを想定するが、それを現実世界で実行に移す必要はない。こうしたトレーニング シナリオを同時に、かつ大規模に実施できるため、ロボットがレゴを拾い上げる動作を学べば、オフライン プロセスにより何千万という異なる複数のオブジェクトの同時学習を加速できる。こうして「あらゆるもの」を拾い上げる方法を習得するのだ。

4. ジェネレーティブ デザインとシミュレーションが製造可能性を予測する
「レーダー作戦ゲーム」というボードゲームを覚えているだろうか? C6、C4 などと位置を指定して、敵陣地を攻撃していくゲームだ。試行錯誤しながら進めていき、運が良ければ敵の戦艦を沈めることができる。

ジェネレーティブ デザインとは、このゲームのルールを逆にして、全ての戦艦の位置を相手に教えるようなものだ。シミュレーションとジェネレーティブ デザインを使用すれば、あらゆる選択肢をでき、また選択肢の全てが製造可能となる。まずコンピューターにより選択肢が精査されるからだ。

例えばエアバスは、ジェネレーティブ デザインを使用して、従来のものより 45% も軽量な機内パーティション (クルー エリアとシート エリアを区切る壁) を作成した。エアバス チームは、ジェネレーティブ デザインで作成された 10,000 点を超えるデザインから数点を選び出し、シミュレーション ソフトウェアを使用して徹底的な検証を行った。その結果、3基のアディティブ マニュファクチャリング システムでプリント可能な、安定した構造でありながら軽量なパーティションが、失敗も無しに生まれた。

このプロセスは、単に時間とコストを節約しただけではない。現在発注済みの数千機の A320 にこのパーティションが使用されれば、年間数千立方 t も二酸化炭素排出量を削減できる。

5. クラウドソース データとジェネレーティブ デザインがより満足度の高い職場を生む
ジェネレーティブ デザインは、まずはプロジェクト開始から製品化までのサイクル タイムが短い製造業界に打撃を与えるようになる。だが建築家も目標や制約、結果の検討にジェネレーティブ デザインを使用する余地がある。

technology predictions Generative design floor-plan options for the MaRS building 

ジェネレーティブ デザインによるトロントの MaRS ビル用フロアプロンのオプション [提供: Autodesk]

その一例が、トロント大学とオートデスクによる MaRS ビルへのアプローチだ。ここではまず、コラボレーション、日当たり、プライバシーなどのニーズを理解するため、従業員を対象に調査を行った。このデータを基に、ジェネレーティブ デザイン ツールで、数千に上る構成から複数のプラン選択肢を作成した。

ビルの向き、窓割り、日よけ、フロア数などの面と、その影響が全て詳細に検証された。だが、建物内部で従業員の生産性を向上させるものはいったい何だろう? その答えは、人間の好み (個人でそれぞれ異なる) をコンピューターによる計算で示す調査データのマッピングにある。

このアプローチでは、複数の達成目標を持つ極めてダイナミックな状況を検証することが重要だ。そしてそれこそ、これまでの「最初にうまくいったものを採用する」といった手法に比べて、ジェネレーティブ デザインのテクニックが最大の力を発揮する場面なのだ。

 

Jeff Kowalski

オートデスクの最高技術責任者 (CTO) であるジェフ・コワルスキーは、テクノロジーに対する長期的なビジョンを作り上げ、ビッグアイディアを探訪することでイノベーションをドライブ。エンジニアやテクノロジスト、マーケター、政策通など幅広いソースから得た、充実したテクニカル、ビジネス、事業アイディアを促進することで高い評価を得ています。 コワルスキーはコーネル大学で電気工学の学士号、コンピューター科学の修士号を得ており、CTOの責務にないときは音楽を演奏し、カリフォルニア州バークレーで家族と過ごしています。

本記事は「創造の未来」をテーマとするオートデスクのサイト「Redshift  日本版」の記事を、許可を得て転載したものです。

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