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3Dプリンターを活用した究極の履き心地のパンプス(株式会社ミリメーター・前編)

市ヶ谷にオフィスを置く株式会社ミリメーターは、2015年10月設立という若い会社だ。2017年1月にスタートしたパンプスのフルオーダーメイドは、日本初3D木型を使った靴作りサービスとなっている。

フルオーダーメイドのパンプスは、2017年1月18日より市ケ谷の『シューズカフェ』で販売。ヒールがあり、かつ靴紐による調整のできないパンプスは、オーダーメイドの難易度が靴の中でも最も高い。

ミリメーターのパンプス作成では、まず顧客の足を全方位から3D測定して木型を作成する。この木型には、骨の形状から腱膜の構造を科学的に解析し、一人ひとりの足の特徴を木型に反映させている。この技術により、「究極のフィット感」を提供できている。
同社の取締役井黒帯明氏に、お話を伺った。

ミリメーターのサービスはAIと3Dプリンターによるオンリーワンの大量生産

人の足の形は一人ひとり異なるが、既製品のパターンは少数。足に合わないパンプスを無理に履き続けると足に負担がかかり、足底腱膜炎などを起こすこともある。
かといってこれまでの靴のオーダーメイドでは、靴職人のいる工房に自ら出向き、足を計測してもらう必要がある。そこから職人が手作業で木型を作り、靴を製造。全工程が職人の手作業に依存するもので、完成まで2ヶ月近い時間がかかることもあるという。

これに対してミリメーターのフルオーダーメイドでは、職人による顧客の足の計測、木型の製作という工程をデジタル化。3Dプリンターを利用して木型を製作することで、大幅なスピードアップを実現している。
3D計測による木型は、採寸箇所が限られている職人の木型を超えるフィット感を達成。さらに、データを保存しておくことで、自分の足に合った靴をいつでも注文できるというメリットもある。

今後は、蓄積されていく足と靴の相関をビッグデータとしてAIで解析。人工知能と自社開発のIoTキットを活用することで、木型製作の工程を完全自動化することを目指している。
AIから3Dプリンターへ、そして靴職人へという分業体制を確立してコストダウンし「女性が当たり前のように靴をオーダーメイドする世界」を築いていく予定だ。

メイドインジャパン品質を支えてきたベテラン職人の技を継承

フルオーダーメイドサービスの開始に合わせて、婦人靴のオーダーシューズショップを開業して60年、日本靴業界の伝道師である酒井満夫氏が技術顧問に就任している。酒井氏が長年の経験によって培った深い知識と技術によってクオリティを担保しつつ、そのノウハウを若い職人たちに受け継がせるという取り組みも行なわれている。

さらに、靴職人を目指す学生に靴作りの設備を提供する、自分の靴を自分で作りたい女性向けの教室を開催する、といった、将来を担う若い職人の育成、雇用拡大にも力を入れていく予定だ。

3Dプリンターによる立体看板・立体文字の作成サービスなども提供

ミリメーターは2016年4月に、世界初という3Dプリンターを使った立体看板・立体文字の作成サービスについて発表。このサービスでは、使用する文字のフォントや大きさ、厚みを自由に指定することができる。さらに、『Adobe Illustrator』のaiファイルをそのまま取り込んで、コーポレートロゴのようなオリジナルデザインの看板を作成することも可能だ。

その他の3Dプリンターによるアウトプットとしては玩具の線路『ワンレール』、カラーバリエーションもある『オリジナル漢字ペン立て』なども展開されている。

前編では、ミリメーターのサービスを紹介した。後編では、同社についてより詳しく伺う。