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コスモ・バイオ株式会社に聞く、3Dバイオプリンターの最新技術(前編)

オルガノボ(Organovo)は、アメリカのバイオベンチャー。3Dバイオプリンターを用いて、製薬会社の開発中の化合物を評価するという業務を行なっている。このオルガノボが、コスモ・バイオ株式会社と提携するというリリースを出した。
コスモ・バイオ株式会社はバイオ研究用試薬、研究用機器の商社で約1200万品目もの品揃えを誇る。試験の受託サービスも多数提供しており、そこにオルガノボが加わったかたちだ。リリース発表後、コスモ・バイオ株式会社でオルガノボを担当するカスタマー・サービス部の太田氏と経営企画室の石角氏にお話を伺った。

オルガノボの3Dバイオプリンター技術の独自性

――本日はよろしくお願いします。まず、オルガノボの概要を教えてください。

太田氏「3Dバイオプリンター自体が割と新しいもので、それを創薬研究に用いている先駆け的な会社になります。プリンター本体というより、サービスがメインです」

――オルガノボのサービスのユーザーは、どういった会社ですか?

太田氏「一番のメインは製薬会社さんですね」

――オルガノボの3Dバイオプリンター技術は、どういった点が優れているのでしょうか。

石角氏「細胞を普通に培養すると、1層にしかならない。しかしオルガノボは3Dという言葉の通り、立体的に細胞を培養できる。層を10層、100層、1000層、10000層と重ねていくと組織になります、肝臓そのものに」

太田氏「今までだと人で試験できませんが、3Dバイオプリンターで人の組織、肝臓のようなものを作り、それで評価ができる、薬剤評価ができる」

――人体以外で安全に評価できるわけですね。以前はどのように評価していたのでしょうか?

太田氏「細胞での評価、動物、最後に実際に人と進めるのが一般的な流れです。動物と人の違いは少なからずあるので、動物では問題がなくても人で試験してみると毒性が出てきてしまう、副作用が出てきてしまう。オルガノボの技術はこれを回避するためのひとつのソリューションになります」

――従来は、この最後の部分でリスクがあったわけですね。

石角氏「しかも、製薬会社にとってこの試験が一番お金もかかるし、時間もかかる。これを回避するためのツールということになります」

――なるほど。よく新薬の開発の話がテレビや漫画等でありますが、そこでは認可に時間がかかるというシーンが出てきます。この技術によって、かかる時間やコストが圧縮できるのでしょうか。

石角氏「10年かかったところが1年というわけにはいきません。ただ、リスクを回避できると、これまで1種類の薬剤を開発するコストで2種類開発できて、より多くの薬が出てくる、という可能性はあります」

――なるほど、腑に落ちました。

太田氏「この技術自体まだ新しいもので、オルガノボも発展途上、あくまで既存の評価に加える〝ひとつのパラメーター〟というような段階です。今は、肝臓の組織を2ミリ四方で作れる程度です」

――将来的にはどうでしょう?

太田氏「将来的には本当に肝臓そのものを作り、動物のものと完全に置き換えられる、というようになっていくのかな、と思います。現状では、世間一般で言う3Dプリンターのような細かいプリンティングができるということではなく、本当に何層重ねられるということだけです。これだけでも、バイオの世界ではすごいことです」

――それほど革新的なことなのですね、層構造を作るのは。お話を伺う前に想像したものよりも、研究の基礎の方に近いものになるのですね。

太田氏「あくまで化合物を評価するというモデルで作っているものなので、人の臓器の機能を再現するのが一番の課題であり、難しいところです」

後編に続く)