ロボットや AI に代替される可能性の高い職業と、そうでない職業のリストを、一度はご覧になったことがあるだろう。クリエイターやミュージシャンなど「創造性や協調性」が必要とされる業務は、将来的にも人間が担う可能性が高いとされている。ではロボットとのコラボレーションにより、新しい創造を行うことはできるのだろうか?
CG の研究開発やロボットアプリ開発などを幅広く手掛けるフリーランスのテクノロジスト、谷口直嗣氏は一昨年から KUKA の産業用ロボットを使ったプロジェクトに取り組んでいる。「2015 国際ロボット展」ではフラワーアーティストの田中孝幸氏を迎えて、人とロボットによる協働のフラワーアレンジメントパフォーマンスを、また 2016 年 3 月には、従来からアプリ開発を手がけてきた Pepper と KUKA ロボットアームが協働する、ソフトバンクの期間限定「Pepper だらけの携帯電話ショップ」の開発にも携わった。
「ロボットも CG も 3D で動いているので、計算的にはほとんど変わりはない」と谷口氏は語る。CG の技術は、「今考えられているよりずっと多くの分野で応用できる」といい、そのひとつがロボットの分野だという。
その谷口氏が新たに取り組んだアイデアが、コマ撮りした映像をつなげて制作するストップモーション アニメを、人とロボットが一緒にやったらどうなるのか?というもの。それがストップモーションアニメーション制作や展覧会ディレクションなど幅広い活動をするグラフィックデザイナー、岡崎智弘氏との 「ストップモーションロボティクス」プロジェクトとなり、2 台のロボットアームでキューブの移動、カメラ撮影を行うユニークなシステムを開発。その展示と講演が 9 月の Autodesk University Japan で行われた。
このプロジェクトでのロボットとの関わり方を、谷口氏は自身の敬愛する音楽=ジャズを引き合いに出して「ロボットと人間がジャム セッションをするような形で作品を作る」ことだと語る。その制作に不可欠な、キューブの移動やカメラによる撮影を行うため、人と一緒に作業できるロボットアームが使用された。
現在、日本国内で稼働する 30 万台にも及ぶ産業用ロボットの大半は、自動車・電子電気業界で使われている。溶接やハンドリングを行う多くのロボットには危険防止の柵や囲いが必要だが、産業用ロボットと人との協業が可能となる安全基準も厚生労働省によって明確化されるようになった。「ストップモーションロボティクス」プロジェクトで使用された KUKA LBR iiwa 14 R820ロボットアームは、7 軸仕様ながら重量は 30 kg 未満のコンパクトなモデルで、従来はロボットが入ることの許されなかった、人が作業できる場所でも働くことができる。
プロジェクトに協力した KUKA ロボティクスジャパン株式会社のカスタマーサービス、テクニカルコーディネート担当マネージャーの小林剛氏は、この最先端のコラボレーティブ ロボットを「人の手のような感覚で作業できるロボット」だと表現する。「LBR iiwa は、単に人へ接触すると止まるというだけでなく、より繊細な感度と作業が特徴になっています。コンピューターのメモリースロットへモジュールを装着するような、力をかけながら何かを組み込むような動きも可能です」と、小林氏。
<後編に続く>
本記事は「創造の未来」をテーマとするオートデスクのサイト「Redshift ⽇本版」の記事を、許可を得て転載したものです。