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CG制作の現場にクラウドレンダリングを提供する「Azure Batch Rendering」サービスとは ~マイクロソフト&ネクストスケープに聞く~(後編)

 

前編から続く)

 

完全従量課金でレンダリングが可能に

 

――「Azure Batch Rendering」の料金体系は?

田中氏:レンダリングで利用するソフトウェア、仮想マシン、ストレージとデータ転送に応じた完全従量課金となっています。1 秒ごとに分単位で切り捨てられて請求される時間単位の課金となっていますが、その料金が60~80%程度も安くなる低優先度仮想マシンを利用することもできます。

岩本氏:弊社のようなパートナー経由で契約すれば請求書払いが可能となります。直接マイクロソフトさんと契約した場合には、クレジットカード払いが必須となります。

 

――低優先度仮想マシンとは?

田中氏:低優先度仮想マシンとは、混雑していると通常利用のユーザーにマシンのリソースが取られてレンダリング時間が長くかかりバッチが中断する可能性があるけれども、最大80%も料金がディスカウントされる利用方法のことです。たとえば、急ぎでレンダリングをしたいときには通常の利用で、納期に余裕があるときには低優先度を利用するといった使い方が考えられると思います。

岩本氏:通常利用しても、低優先度で利用しても、レンダリングをおこなうマシンのスペックは変わりません。そこで我々がおこなったテスト結果をみると、低優先度でもスペックの高いマシンを利用するほうがコストパフォーマンスは高く、価格に対する処理速度の優位性が高くなりました。ただ、レンダリング時間が長いコンテンツの場合、何時間もかけたレンダリングのジョブが中断されるとレンダリングのやり直しとなり、時間のロスが大きくなります。そこで、どこまで価格とのバランスがとれるかという話になってくるかと思います。

 

――クラウドサービスとなると、セキュリティが気になるところですが…。

田中氏:国際安全標準規格認定団体であるCDSAのCPS(ContentProtection and Security)認定と、MPAA(Motion Picture Association of America =アメリカ映画協会)監査の両方をクリアしており、セキュリティ的には万全です。ちなみに、主なクラウドレンダリングサービスで、両方をクリアしているのは「Azure Batch Rendering」だけとなっています。

 

――ネットスケープでは、どのようなクラウドレンダリング導入支援をおこなっていますか?

岩本氏:国内の映像・CG制作会社向けに、クラウド契約、環境構築、技術サポート込みのクラウドレンダリング導入サービス「NS-Render」を提供しています。この「NS-Render」には、「Azure Batch Rendering導入支援サービス」のほか、Maya、3ds Max ユーザー向けサブスクリプション特典のクラウド利用権をBYOL(Bring Your Own License:ライセンス持ち込み)方式で活用し、ユーザーインターフェイスを用いないバッチを実行できる「クラウドレンダリングVPN環境構築サービス」も用意しています。

 

――「Azure Batch Rendering」には、どのような導入事例がありますか?

田中氏:グローバルですと、ハリウッド映画のVFXも多数手がけている、イギリス・ロンドンのJellyfish Picturesなどといった導入事例があります。

岩本氏:弊社が知る限り、国内では「Azure Batch Rendering」を導入しているCG制作会社はありません。その理由としては、CG制作会社のITリテラシーがまだ十分でないからだと考えています。それに加えて、クラウドはリソースを使おうと思えばいくらでも使えます。そのため「一制作担当者レベルに権限を渡したくない」という理由もあるのではないでしょうか。ただ「Azure Batch Rendering」の場合、ジョブを回していないのに無駄に費用が発生するようなことはありませんので、そのあたりの意識も変わってくると思います。

 

――最後に、「Azure Batch Rendering」に興味があるCG制作会社やCGクリエイターに対して、メッセージを!

田中氏:ようやく、エンドユーザー目線で使えるクラウドレンダリングサービスを出すことができました。「Azure Batch Rendering」はCG制作現場でうまく活用できるサービスですので、CG制作者には気軽に使っていただきたいと考えています!

岩本氏:従量課金というのが、「Azure Batch Rendering」の大きなメリットです。そのため、設備投資する必要がなく、初期投資が少なく済みます。「Azure Batch Rendering」を利用すれば、「クリエイターの腕と時間はあるけれどもレンダリングできるマシンの余裕がなくて、仕事が受けられない」という問題を一気に解決できますので、CG制作会社の皆さんに是非とも利用をお勧めしたいですね。

 

――本日はありがとうございました!