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ゲームAI・ゲームデザインから考えるゲームの過去・現在・未来(2)

ゲームAIの過去・現在・未来

第二部は、三宅陽一郎氏による『「ゲームAI」から考えるゲームの過去・現在・未来』。三宅氏は『FFXV』でリードAIアーキテクトを担当している、ゲームAIの第一人者だ。『絵でわかる人工知能』や『人工知能の作り方』といった著書もある。

三宅氏はまずゲームAIのオーバービューが示し、現代ゲームにおけるAIの構造から解説していった。現代ゲームでは、AIの役割としてゲームそのものをコントロールする『メタAI』、キャラクターの脳として機能する『キャラクターAI』、パス検索など地形・状況など空間的な情報を抽出する『ナビゲーションAI』の3つがある。

古典的なゲームではAIとゲームシステムなどが混沌としていたが、2000年くらいから3つのAIへの分化が進行。さらにキャラクターでは、ゲームデザイナーの思考を直接反映する『Scripted AI』から、独立した知識と思考を持つ『自律型AI』へと変化している。

人間は〝どこを歩けばいいか〟といったことを瞬時に判断できるが、キャラクターは環境認識を苦手としている。ナビゲーションAIとナビゲーション・データを与えなければ、歩くことができない。
具体例として挙げられたのは、『FFXIV:A Realm Reborn』。ナビゲーション・メッシュによってモンスターが自立して歩く動画や、崖下から経路を探して上へと登る動画が流された。

FFXIVでのモンスターの歩行

FFXIVでのモンスターの歩行

 

メタAIの歴史は意外と古く、1980年代の『ゼビウス』までさかのぼることができる。ここでは、敵の強さをコントロールする自動バランス調整が行なわれていた。
現代のメタAIは敵の生成、配置、ストーリー、レベルの動的生成などを担っている。ゲームデザイナーそのものをゲームに埋め込むものとも言える。その例として、出現する敵の数をコントロールし、ユーザーに緊張と緩和のリズムを与える『Left 4 Dead』のアルゴリズムが取り上げられた。

キャラクターAIでは、エポックメイキングだった『Halo』を例にとって解説。この頃からキャラクターは「自分で感じて、自分で考え、自分でアウトプットする」ようになった。それに必要なのは、やはりデータだ。キャラクターは世界そのものを認識できないので、補助的な『知識表現データ』を入れなければならない。

キャラクターの作り方としては、代表的なAIの分類『ルールベースAI』『ステートベースAI』『ビヘイビアベースAI』『ゴールベースAI』『タスクベースAI』『ユーティリティベースAI』『シミュレーションベースAI』が示された。
また、キャラクターも経験を得て学習し行動選択の方針を変える『強化学習』、遺伝的アルゴリズムを組み込んだ『アストロノーカ』などにも触れられた。

 

ゲームの過去・現在・未来

続く第三部は、大野氏と三宅氏の対談。まずキーワードとして提示されたのは『人とゲームAIの向き合い方の未来(「フィルタリング」か「コネクティング」か)』。
三宅氏は、ゲームはユーザーが没入するので「ゲーム自身がコネクティングの役割を果たす」とした。

三宅氏「これまで〝何となく〟が多かったゲーム制作で、これからはAIが積極的に間を取り持つ時代になる。マッチングやゲームコントロールなど人間の代わりの役割を果たすだけでなく、人と人の間でもAIが大きな役割を果たすだろう」

大野氏は「ゲームデザインに関しても伸びしろはまだまだある」とした。たとえばモバイルゲームやコンシューマーゲームでの対戦では、勝てない相手とばかりあたってしまうと止めてしまう。「如何に面白く楽しめる組み合わせでコネクションするか」は、非常に重要だとした。
伸びしろの部分に関して、再び三宅氏も言及。「現代のメタAIは2008年くらいから始まったもので、まだ研究が進んでいない。これからはAI自身が起承転結を作ってプレイヤーを楽しませるようになる」という見通しを示した。

 

3へ続く)