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セルシェーダーを使用した3Dキャラアプリの開発事例~「Unite 2017 Tokyo 」講演レポートその2~(後編)

2017年5月8日~9日に行われた国内最大のUnityカンファレンスイベント「Unite 2017 Tokyo 」でおこなわれた講演のうち、今回紹介するのは谷口充大氏が登壇した「セルシェーダーを使用した3Dキャラアプリの開発事例」。

株式会社テトラの代表取締役でありディレクターも務める谷口氏がおこなったこの講演では、Maya+Unity+Shotgun(プロジェクト管理ツール)を使用した3Dキャラアプリ開発の事例が紹介された。そこでは、ハイクオリティなセルシェーダー・キャラクターの制作術や、短期間での開発を実現するための効率的なプロジェクト管理方法、3Dアプリ開発における様々な問題点と解決策、さらにはリアルタイムモーションキャプチャーサービスなどの具体的な解説がなされた。

前編)より続く

ShotgunとRVを使用したプロジェクト管理

『夢幻のラビリズ』のプロジェクト管理は、ShotgunとRVを使用しておこなっている。

「質感をつけたモデルはディレクターチェックを通すようにしました。Unity上で質感調整や見た目の確認をしたらレンダリングして動画を作成するといった流れです。動画のチェックはRV上でできる仕組みを作っており、それに対してディレクターがコメントを書いて返信をしていくという流れです」

また、モデルやデザインが仕上がっているものはRVのプレイリストに表示され、動画提出後のコメントとチェックバックが表示されていく。

「弊社では最終的なクオリティチェックをするのは僕しかいませんので、とにかく僕のチェックバックが遅れないための仕組み作りを心掛けました。そのため、デザイナーにとっては多少面倒なところがあるかもしれませんが、逆に言えばこうすることによって過去のすべてのログも一目で見られるようになるというメリットもあります。今回、ゲーム制作におけるアセット管理のために初めてShotgunを使用したのですが、すべての工数管理が記載され一覧で見られるようになりました。そこでは、工数がどこまで進んでいるのか%表示されるようになったので、プロジェクトの進捗状況が把握しやすくなったと思います。ただそれでは個人のタスクがわからなくなるために個人ページを作成。自分に割り当てられているタスクがすべて表示され、各タスクの進捗状況と炎上具合が一目でわかるようにしました」。

 

ワークフローにShotgun Toolkitを使用

『夢幻のラビリズ』制作時のワークフローにおける新しい試みをもう一つおこなっている。それはShotgun Toolkitの使用だ。ワークフロー上でShotgunとMayaやNuke、Photoshopなど各ソフトウェアとの連携をおこなうためのツールメニューであるShotgun Toolkit。あらかじめフォルダ構造を決めて設定しておけば、Shotgun上からアセットに登録したファイルを開いたり、Mayaなどのソフトウェア側でファイルを保存するとき、同時にShotgun上のデータを更新できるといったメリットを持つ。

Shotgun Toolkitを試験的に導入して便利だと感じたことは以下の内容となる。

1.フォルダを自動で生成してくれること

2.ファイルのネーミングルールを固定化できること

3.シーンのブラウジングを楽におこなえること

4.設定や拡張で様々な処理を追加できること

 

逆に、不便なところもいくつか見つかっている。

1.このツールだけではフォルダ構造やネーミングルールの途中変更が難しいこと

2.現状では資料が英語バージョンしかないこと

3.フォルダ構造やネーミングルールとShotgun運用との摺り合わせが難しいこと

 

「Shotgun Toolkitは、とにかく設定が大変なので、慣れるまではデフォルト設定で使うのがオススメです。とくにプログラマが不在の会社ではカスタマイズして使うと失敗するでしょう。ただ、Shotgunだけでもワークフローそのものには十分効果があります。そこで、まずはShotgunを導入し、それに慣れてきてからToolkitの試運転をしてみてはいかがでしょうか」

Shotgun Toolkitは最初だけ設定に苦労するが導入後はデザイナーに非常に好評であり、「データの受け渡しが楽になった」「保存時にファイル名を変更する必要がなくて楽」という意見が上がったという。

 

完全リアルタイムなパフォーマンスキャプチャを自社で開発

次に紹介したのは、Prefabの更新ツール「FBX Prefab Updater」だ。モデルのFBXの更新時にはPrefabも更新する必要があるが、Prefabを作り直すとPrefabやシーンに「FBX Prefab Updater」なのである。

「今回のキャラクター『リズモデル』の特性上、FBXを何度もアップデートしながらクオリティを見直していく必要がありました。このような経緯からこのツールを作成しています。このツールではPrefabがあるフォルダとFBXがあるフォルダを指定して更新したものを選んで実行するとまとめて更新ができるほか、元のPrefabやインスタンスのパラメータを引き継ぐこともできる仕様になっています。なお、このツールは今後、アセットストアでの無料公開を進めています」

最後は、同社で開発しているUnityを使用した次世代型キャプチャシステム「CAPTUREROID」が紹介された。

「弊社ではモーションキャプチャを使用し始めてから6年以上が経っています。ある程度はノウハウが蓄積されてきたことで、それを利用してUnity上で完全リアルタイムなパフォーマンスキャプチャを作成しました。これはボディだけでなく表情や手まで、すべてがリアルタイムに動くものとなります。ゲームコントローラーを使用したカメラワークやアングルまでのカメラスイッチングにも対応しているため、リアルタイムで会話ができるCGキャラクターによる『TV番組風のトークショー』の放送というのも実現可能となりました」

将来的に同社では、「CAPTUREROID」のコンシューマー向けの活用も考えている。パソコンの上にピクチャーカメラを置くことにより、上半身だけであればモーションキャプチャが撮れる仕組みを構築。自分の表情や体の動きがCGキャラクターに置き換えられるため、誰でも完全な匿名性を守った状態のままYouTuberになることも可能だという。