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CG Pro Insightsシリーズ「マヤ道!!」の著者Eske Yoshinob氏に聞く(後編)

 

前編から続く)

 

リガーの初心に返らせてくれるロボット玩具にハマっている

――ところで、Eskeさんご自身が最近注目していることは?

ここ数年は手に取って触れるフィギュアや玩具に注目しています。以前からハマっているのは、タカラトミーから発売されている変形ロボット玩具「トランスフォーマー」。同じモデルをいくつも購入して、遊び倒し用と会社用と自宅用と分けて置くぐらい、どっぷりとハマっていました。この変形ロボットというのは変形ロジックがもの凄くよく考えられていて、(リガーっぽい見方なのだと思いますが)「組み方をどうすればこういう形を達成できるのか」というところはリグの考え方のトレーニングにもなりますし、そこからインスピレーションを得ることもたくさんあります。CGはリアルなモノとは異なり、重力の制限やパーツの強度の制限がないため、より凄いことができるはずなので、おもちゃの「トランスフォーマー」の仕組みをCG的なアプローチでなにかできないかと考えているところです。

あと、去年からハマってしまったのが、戦隊もの『動物戦隊ジュウオウジャー』(2017年放映)の玩具「ジュウオウキューブ」です。「ジュウオウキューブ」のパーツ構成特徴は、「トランスフォーマー」と対局です。「トランスフォーマー」は細かくパーツを動かしてロボットからクルマなどに変形しますが、「ジュウオウキューブ」は対象年齢が低いために、いかに少ない手順で目的を達成するかを追求したものになっています。

CGだとマウスとディスプレイがインターフェイスになってしまうため、なかなか手で触る感覚を忘れてしまいがちです。しかしそんなとき、初心に戻り触って動かしてみるとホンモノの良さを再実感できます。別に「ジュウオウキューブ」でなくガンプラでもいいのですが、リガーならとくに実体のあるモノを触って体で動きを体感したほうがいいと思っています。CGの世界でもシンプルにして最低限必要なものだけで構成していくということをしないと、どんどん複雑化して構造がよくわからないものになってきますし、複雑化していけば当然、メンテナンスも面倒になり誰も触らないツールになりがちです。そこで、「キレイに無駄なくすることが大事」ということをフィギュアや玩具からインスピレーションを得ています。

 

――今後の活動予定を教えてください。

常々私が感じているのは、日本のCGプロダクションはワークフローが弱い会社が多いということ。しかし、ワークフローを組むのには経験値が必要ですし、実際にワークフローを策定してきちんと回そうとするとパイプラインツールが必要になってくるため、開発コストも必要になってきます。また、ワークフローを組んでパイプラインツールを開発するということではその会社に直接的な利益は生みません。最終的には、ワークフローが最適化されるとトラブルが減りクオリティ向上に貢献しますが、目に見える形で利益を生まないことからなかなか手を出すことが難しいのです。

しかしちょうど、私が仕事で関わっているStudioGOONEYSでパイプラインツールを開発しており、「それを広く共有化して使用していこう」という試みを進めています。そして、この試みを「必要なのはわかっていて作りたいけれども、資金も時間もなくて困っている」というCGプロダクションと協力しながら進めていきたいと考えています。広くパイプラインツールを使っていただき、「ルールがあれば下流で炎上しない!」と実感してもらえるようになったらいいですね。

 

――本日はありがとうござました!

 

著書プロフィール

Eske Yoshinob

2001年から大阪のゲームプロダクションに勤務。2006 年からSquare-EnixのVisualWorksでセットアップ・ツール開発としての参加を経て、2009 年からフリーのイラストレーター兼デザイナーとして活動を開始。最近では、ボーンデジタルが主催するアニメーションコンテスト用のキャラクター「デジコ」のリグを担当したほか、ツールの作成やMayaの教育、イラストレーション作成など幅広く活動中。