去る2017年11月5日、東京都文京区に位置する「文京学院大学本郷キャンパス」において「CGWORLD 2017 クリエイティブ カンファレンス」(主催:文京学院大学、株式会社ボーンデジタル)が開催された。本カンファレンスは、業界の垣根を超え、誰もが気軽に勉強や交流ができる場所を提供しようというコンセプトのもと、2011年からスタート。今年で7回目の開催になるイベントとなっている。
本イベントでは、アマゾン ウェブ サービス(AWS)やマウスコンピューターなどの企業展示やASIAGRAPH CGアートギャラリー展示がおこなわれていたほか、数多くのセッションが開催。業界をリードするクリエイターにより、新たな技術、表現、考えなどの講演がおこなわれていた。
本稿では、その数あるセッションの中から、株式会社ピクスのテクニカルディレクター坂本 立羽 氏と、モンブラン・ピクチャーズ株式会社のテクニカルディレクター吉田 真也 氏が登壇しておこなわれた『リアルタイムトラッキング&プロジェクションマッピング「EXISDANCE」における Unityを使用したCGアニメーション制作フロー』と題するセッションを紹介していきたい。
「EXISDANCE」とは、パナソニック株式会社の最新技術であるハイスピードトラッキングを基盤に株式会社ピクスが開発した、3Dプロジェクションマッピングシステムによるライブショーである。「EXISDANCE」は、日本最強の格闘技である空手と日本のテクノロジー&カルチャーを象徴するような身体の動きをミックスさせたダンスに、映像が高速追従。その世界観を拡張演出するという次世代のライブショーとなっており、北米最大規模のAV機器展「InfoComm 2017」(2017年6月14日~16日開催)にて発表され、大きな話題を呼んだ。
この映像の開発にはUnityを使用。それにより、ダンサーの動きをリアルタイムに3D空間へ反映し、立体感のある映像表現を可能にしている。また、ダンサーにはミッシー・エリオット、ウィル・アイ・アムのバックダンサーを務めるなど世界的に活躍している「Kikky氏」を起用。空手や伝統芸能と、身体表現を組み合わせたダンスを披露している。
じつはこのシステムには第一弾があり、高速追従マッピングデモコンテンツ「Animated Cloth」として2016年のCES (Consumer Electronics Show) にて発表されている。それが現地にて大きな反響があったほか、国内でもグッドデザイン賞を受賞するなど、高く評価され、2017年の3Dプロジェクションマッピングシステムへとつながる。
「このシステムのなにが凄いかというと、映像に演者がライブでトラッキングできるので、演者自体が場の空気を読んだ演出やライブ感がある演出が可能になるということです。また、通常のプロジェクターが1秒間に30~60枚を描画(30~60fps)するのに比べ、本システムはそれをはるかに超える毎秒1920枚で描画(1920fps)することができます(トラッキングのためのセンシングは1000fps)。一般的には映像が1msec(ミリセック)を超すと人間の脳が本物なのか映像なのか差分を感じなくなるので、1000fps以上の本システムならリアルなものに感じるというわけです。そのほか、画質についても、明るさ1万lm(ルーメン)、フルHD (1920×1080pixcel)の高解像度を実現。2Dでの高速追従に加え、回転、傾きにも対応できるシステムに進化し、より立体的な表現が可能になっています」(坂本氏)
「EXISDANCE」のサンプル動画
映像と演者が一緒になっている作品は世にたくさん存在するが、どうしても映像側に演者が合わせているパターンが多い。それらに比べると、このシステムは演者の自由度が高くライブ感がある。また、さらなるリアリティを出すためにリアルタイム3DCGと組み合わせる(Unityと連動)ことで、より立体感があるような表現やライティングとマッチした表現が可能になっている。坂本氏は「ARを裸眼で見るような感覚に近いのかなと思っています」と話す。
「演出面の話をしますと、ダンサーであるKikky氏の空手演舞は日本のカルチャーという意味でも面白いし、空手の格好良さがもあります。そこでこれらを一体化できないかと考えて『空手演舞』を前面に出しながら、デザイン(モーション)の美しさや気持ちよさが追従しているような表現をしたいと考えました。もう一つはテクノロジーを感じるよう、3Dプロジェクションマッピングとして“アイアンマン”的なスーツを着せてみたい、という思いもありました。結局なにがやりたいのかというと、一連のショーの中で2Dの高速追従という動画を使った演出(アニーメーションの部分)から、徐々にテクノロジーに支配されていくというような表現したかったわけです。それに加えて、ライブ感覚を伝えることがキーワードとなっており、映像とリアルに融合するライブ感の面白さを表現したいということもありました。これらを前提として、それをCGでどう実現していくのかを、モンブラン・ピクチャーズ株式会社の吉田さんにお願いしたわけです」(坂本氏)
(後編に続く)